こういう話題でも、極まれながら必要とする人に発見されて感想をもらえることがあります。今回は私にとって長年疑問だったことが、ある論文を読んで解決できたので、それを私なりの理解で書き下してみました。数式が多いのでMathJaxを使用しています。IEの古いバージョンなどでは読めないかもしれません。スマートファンの方は、PC版のページでご覧下さい。なお、順列組み合わせの記号として
確率論の世界に「クーポンコレクター問題」というものがある。これは「トレーディングカード問題」とも呼ばれ、その見かけの単純さと内容の深さとのギャップから、しばしば話題になる問題である。
どのような問題か。例えば
CDにカードが1枚付属して売られている。カードは5種類あり、その中からランダムで選ばれたものが入っている。この時、カード5種類全てを揃えるにはCDを平均で何枚買えば良いか
というようなものである。実世界で良くある設定なので、実用性が高い問題と言えるだろう。実は、これに答えるだけならば簡単である。まずどれか1種類のカードが揃うまでには、当然CDを1枚買えば良い。2種類目のカードが揃うためには、1枚目に出たカード以外のものが出れば良い。その確率は
となる。カードが
ここまでは簡単。
しかし、実用上はもう少し詳しい情報が欲しい。例えば
- CDを買うチャンスは1度しかないとする。確率90%で全部揃えたいのだが、CDは何枚買えば良いか
- CDを10枚買うと何%の確率でコンプリートに成功するのか
といったことを知りたいのである。そこで、問題を一般化してみよう。
カードが
種類ある場合にCDを 枚買ったとして、カードが全て揃う確率はいくらか
こうなると、確率問題の中でも難しい部類に入る。
まず、確率ではなく場合の数を求めてみよう。これには包含と排除の原理(包除の原理)というものを使うことになる。起こりうる全ての場合の数は、
ところがこの数には、2種類以上のカードが欠けている場合が重複して数えられている。(仮)としたのはそのためである。従って重複した分を引かなければならず、具体的には次の数を引き算することになる。
次はもう想像が付くかと思う。この数は3種類以上のカードが欠けている場合を重複して数えているので、それをまた引かなければならないのである。そしてこのプロセスを最後(
最後の行は、
さて、求めたいのは確率である。これは、CDを
カードが5種類あるとして、CDを
上に出した例で言えば、90%の確率でコンプリートを成功させるには18枚買えば良いことになる。また10枚買った時の成功率は52%である。
これで問題は解決したが、もう一段階だけ一般化した式も示しておきたい。
種類のカードのうち1枚がランダムで選ばれて入っているCDを 枚買ったとして、カードが 種類揃っている確率はいくらか
というものを考える。今までの理論に少し手を加えれば、これは容易に解ける。
だから、それを掛けて全ての場合の数
この式があれば大抵のことはわかるはずである。例えば
ある会社では、社員の誰かが誕生日ならばその日はパーティーを開く。n人の社員がいる場合に、年間100日以上パーティーが開かれる確率を求めよ
というような問題も計算で求められる。
さて、ここまでは良い。実際の値を計算するのは大変だが、考え方自体は高校生でも何とか理解できる範疇だと思う。私が長年疑問だったのは「では
その2へとつづく。
2 個のコメント
海外の論文よんでもさっぱりでしたがあなたの解説見つけたあと全部わかりました!感謝でです!
ありがとうございます!お役に立てたとは嬉しい限りです。