ビットコインの原論文を読む 12節 結論

12 結論

信頼関係を必要としない電子取引システムを提案した。まず、電子署名だけに頼った通貨を考えたが、所有権を強力に制御できるものの、多重使用を防げないことが判明した。この問題を解決するため、各利用者が取引を公開し、演算量証明を利用してその履歴を記録するP2Pネットワークを考案した。もし、善良なノードがCPU能力の大半を占めていれば、攻撃者による偽造は計算論的にほとんど不可能である。本ネットワークの形は決まっておらず、素朴な仕組みなので、堅牢性に優れている。さらに、各ノードは協調せずばらばらに動いて良い。そしてすべての情報について、必ず届かなければならないという場所を設ける必要は無く、またベストエフォートで広がれば良い。つまり、ノードはすべて平等に扱える。各ノードはいつネットワークから離れ、再接続しても構わない。その間の演算量証明は他のノードから得られる。ネットワークはCPU能力をもとに投票を実施し、現行のチェーンに対して、正しいブロックを追加し不正なブロックを拒否する。この同意メカニズムによりルールが守られ、ネットワークの維持に貢献した各利用者が報酬を得る。

これでSatoshi Nakamotoの論文は終わりです。どうでしょうか、ビットコインの巧妙な設計とともに、弱点も見えてきたような気がします。現に、ビットコイン以降、欠点を改良したライトコインやフェザーコイン、日本発のモナーコインなどの後継が続々と登場しています。個人的には、電子通貨が本格的に普及するとしたら、そういった改良版、またはその後継、あるいはさらに何代か後のコインが主役になるのではないかと思います。ビットコインはまだ荒削りで、社会実験の第一弾という段階でしょう。今後もそれなりに力を持ち続けると思いますが、新規格が生まれるにつれ他の通貨に両替され、徐々にフェードアウトして行くのではないでしょうか。

この論文で初めて知りましたが、演算量証明という考え方はいろいろと応用が広そうです。例えば経理の分野で、台帳をハッシュ化してタイムスタンプを作っておけば、後で偽造したものではないことを示せます。創作物も、作った時点でその証拠を取っておけば、盗作騒動を避けられます。遺言状に利用すると、信頼性が大いに増すでしょう。問題は、誰がその演算証明を行うかですが、上手くビットコインなどのシステムに埋め込めないかと思います。受益者からノード稼働者に報酬が伝わるようなシステムを作れれば、コインシステムも長生きできるでしょう。

ビットコインに対する批判として、何の役にも立たない無駄な計算に電力が使われているというものがあります。省エネが叫ばれているご時世に、これに関しては反論の余地がありません。何とかして、白血病解析やSETI@HOMEのような分散コンピューティングの問題を組み込めれば、通貨システムを維持しながら社会の役にも立ち、理想的なのですが。

ビットコイン原論文の連載は、これで終わりです。Mt.Gox閉鎖騒動などがあり電子通貨システムの今後は不透明ですが、逆に目が離せない面白い状況とも言えます。今後も、電子通貨には注目し続けたいと思います。以上、ここまでお付き合いしていただきありがとうございました。

 

2 個のコメント

    • 匿名 on 2016年12月18日 at 8:59 PM
    • 返信

    ビットコインの記事全て読みました。
    参考になりました。

    1. ありがとうございます!

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