即売会釣り銭問題

 文学フリマでヘルツシュタルク氏へのインタビュー本を頒布いたしました。ぴっちぶれんどのブースに来ていただいた方々、どうもありがとうございました。
 さて、今回の文学フリマでは、ある統計を取っていました。それは、みなさんがどの券種のお金で購入しようとするかです。即売会のたびに釣り銭、特に大量に必要な100円玉をどの程度用意しておけば良いのか迷うので、その消費量を調査し必要量を数理的に決定して、次回に生かそうと考えたわけです。

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阿部の打球は本当に曲がったのか

今回はこの記事について調べてみました。
http://news.infoseek.co.jp/article/01fujizak20120901011

 巨人・阿部慎之助捕手(33)の放った打球が真夏の“超常現象”を引き起こし話題となっている。
 問題の打球は8月26日の横浜DeNA戦(横浜)の6回、阿部が左腕・篠原貴行投手(35)から放った19号2ラン。高い弧を描いて下降をはじめ、中飛かと思われた次の瞬間、突然空中でバウンドするような軌道でバックスクリーンに飛び込んだのだ。
(中略)
 「鳥か虫に当たったんじゃないか」「鳥なら映像に映るはず。虫であれほどの変化はしないだろ」「飛行中の透明のUFO(未確認飛行物体)に当たって跳ね返ったのに違いない」など、喧々諤々の議論が続く。
(後略)

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「最後の歯車式計算機クルタ」再版のお知らせ

クルト・ヘルツシュタルク氏へのインタビュー本について、再販することになりました。次の日程で販売予定です。
1 コミックシティ福岡30
日時:2012年9月16日
会場:Yahoo! JAPANドーム(福岡)
ブース:F66a(発笑探検隊での委託販売)
こちらはかなり少部数(数部程度)の販売となります。また、私が多少お手伝いしたクルタ計算機のマニュアルの翻訳も、同時に販売されるはずです。
2 第十五回文学フリマ
日時:2012年11月18日
会場:東京流通センター 第二展示場
ブース:???(ぴっちぶれんどとしての参加予定)
こちらへは、多分売り切れない程度の部数を持って行く予定です。ただし落選した場合は委託先等が無いので、立ち消えです。 ←結局抽選無しでした。
文学フリマで売れ残った分は……どうしましょうか。冬コミは参加しないつもりなので委託か来年の夏コミで頒布するか、あるいはそれ以外の何らかの方法でお届けできるようにしたいと考えています。
ここで、もう一度どのような本なのかを説明しようかと思います。

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「最後の歯車式計算機クルタ」をお買い上げいただいた方へ

 全く宣伝等を行っていませんでしたが、表題の本の第2刷をコミケC82にて販売しておりました。今回も多くの方に来ていただき、本当にありがとうございます。大部数を刷ったつもりでしたが、やはり売り切れてしまいました。買えなかった方には本当に申し訳ありません。今後また販売の機会があるかどうかは、全くの未定です。なお、隣のブースの『発笑探検隊』で出していたクルタ計算機のマニュアルの翻訳にも、多少協力させていただきました。こちらの本はC83で増刷される見込みです。
 「最後の歯車式計算機クルタ」に関して、一つだけ補足があります。実は第2刷で修正しようと思っていましたが、忘れていました。P59上段最後の段落です。

オドネル社の計算機は操作が少し難しい。まず数字の入力では、小さな釘を何本も操作しなければならない。機械は大きいのに、釘の間隔はこのクルタの入力部分よりも狭く、その釘が回転したり無くなったりするので合わせにくい。

 この『釘が回転したり無くなったりする』の意味が分かりにくいと思いますので解説します。

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複数人で協力するクーポンコレクター問題(その3)

その1
その2
の続きです。数式表示のためMathJaxを使用。古いブラウザでは見えないかもしれません。


 今回は、思いもよらず長大な解説となってしまった。この問題は何年も前にある方から質問されたものだが、当時は知識不足で全く答えられなかった。その後ずっと頭の隅には残っていたのだが、論文で解かれていたことを最近になって発見し、ようやく他人に解説できる程度には理解したという次第である。私に質問したその方とはもう会う機会がなくなり、結果をお聞かせできないことが残念である。だがこうしてブログにまとめを載せておくことにより、少しでも必要としている人の役に立てば幸いである。

 以降の式は自力で導き出したものなので多少不安だが、検算で間違いが見つからなかったので、多分問題ないと思う。

 さて、複数人で協力するクーポンコレクター問題における、コンプリート確率を求めたい。つまり次のような値を計算したいわけである。

 CD1枚に、$n$種類からランダムに選ばれた1枚のカードが付属することになっている。CDを$i$枚購入した時に、それぞれの種類のカードが少なくとも$m$枚ずつ揃う確率はいくらか。

これを$m$人で共同購入する問題とみなす場合には、$i$を一人当たりの購入枚数と人数$m$との積に置き換えれば良い。(今回は、前回の追記部分に書いた問題は発生しない。)

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複数人で協力するクーポンコレクター問題(その2)

その1の続きです。数式表示のためMathJaxを使用。古いブラウザでは見えないかもしれません。


 コレクター問題において、複数人が協力した場合にどの程度購入枚数が減るのか。問題を次のように定式化しよう。

 CD1枚に、$n$種類からランダムに選ばれた1枚のカードが付属することになっている。それぞれの種類のカードが少なくとも$m$枚ずつ揃うまでに必要な、平均CD購入枚数$E_m(n)$は何枚か。

 複数人で購入という書き方にはなっていないが、$m$人グループで購入した場合と本質的には同じ問題である。もっとも、各人の平均購入枚数を求めるには、最後にこの結果を$m$で割らなければならない(※これ厳密には間違っていました。追記参照)。これまでに考察したのは、この問題において$m=1$とした特殊ケースである。

 一見、この問題も同じように包含と排除の原理で考えれば解けそうである。しかしこれが上手く行かない。$m=1$以外の場合は、同じ手法では破綻してしまうのである。この問題は、NewmanとSheppが巧妙な方法により解決している。さっそくその論文を見てみよう。

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複数人で協力するクーポンコレクター問題(その1)

 こういう話題でも、極まれながら必要とする人に発見されて感想をもらえることがあります。今回は私にとって長年疑問だったことが、ある論文を読んで解決できたので、それを私なりの理解で書き下してみました。数式が多いのでMathJaxを使用しています。IEの古いバージョンなどでは読めないかもしれません。スマートファンの方は、PC版のページでご覧下さい。なお、順列組み合わせの記号として$_x C_y$の代わりに$\binom{x}{y}$を使用します。


 確率論の世界に「クーポンコレクター問題」というものがある。これは「トレーディングカード問題」とも呼ばれ、その見かけの単純さと内容の深さとのギャップから、しばしば話題になる問題である。

 どのような問題か。例えば

 CDにカードが1枚付属して売られている。カードは5種類あり、その中からランダムで選ばれたものが入っている。この時、カード5種類全てを揃えるにはCDを平均で何枚買えば良いか

というようなものである。実世界で良くある設定なので、実用性が高い問題と言えるだろう。実は、これに答えるだけならば簡単である。まずどれか1種類のカードが揃うまでには、当然CDを1枚買えば良い。2種類目のカードが揃うためには、1枚目に出たカード以外のものが出れば良い。その確率は$\frac{4}{5}$だから、揃うまでの平均CD購入枚数は$1+\frac{5}{4}$である。以下同様に考えると、全てのカードが揃うまでの平均CD購入枚数は
\[1+\frac{5}{4}+\frac{5}{3}+\frac{5}{2}+\frac{5}{1}=\frac{137}{12}\cong 11.42\]
となる。カードが$n$種類ある場合、平均で$\sum_{i=1}^n \frac{n}{i}$枚のCDを購入すると全種類が揃う。

 ここまでは簡単。

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【『団地団』発売記念】デジモン・アドベンチャーとキャプテンクランチ事件

 はじめに謝っておきますが、団地とは全く関係無い話です。すみません。
 今週木曜日(1/19)に『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』という本が発売されます。ロフトプラスワンで開かれていたイベントを書籍化したものですが、イベントには初回を除いて毎回参加していたので、本の方もぜひ購入しようと思っています。
 おそらく本にも掲載されている話で、イベントの3回目ではアニメ映画の『劇場版デジモン・アドベンチャー』が取り上げられました。団地を舞台にしたアニメの代表作ということで、これがピックアップされるのは当然の流れでした。
 この映画では、主人公の少年とモンスターがコミュニケーションを取る手段として、小さな笛を使います。この設定について、団地イベントの出演者である脚本家の佐藤大さんが「団地とは関係ないことだけど」と語りだしたのが興味深い話でした。これは、人類がデジタルのモンスターに初めてコンタクトした場面である。同時にこのシーンは、人類が初めてクラッキングに成功したキャプテンクランチの事件を模している、というのです。今回はこの話を取り上げてみます。

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「最後の歯車式計算機 〜」誤字・脱字

「最後の歯車式計算機 クルト・ヘルツシュタルク氏インタビュー」ですが、脱字を発見しました。本として形になった後に「別の表現にすれば良かったな」と思うところは数多くありますが、キリがないのでとりあえずは明確なミスを修正します。
P43下段最後から3行目
×「その で工場の土地は」
○「そのおかげで工場の土地は」
校正が行き届いておらず、申し訳ありません。
脱字は別としても、工場のオーナーが収容所で犠牲になると、なぜそこがフランス領になるのかと疑問に思われる方が多いと思います。実はこれ、翻訳者もわかりませんでした。そういう政策がとられていたのでしょうか。ご存じの方がいたら教えてください。
他に誤字・脱字・翻訳ミスを発見された方もご連絡ください。この日記に追加していきます。
(以下追記)
P5 6行目
×約125$(3万円)
○約125$(4万5千円)
1ドル=240円で計算していましたが、1969年当時はブレトン・ウッズ体制のもと1ドル=360円でした。
P12上段 本文5行目
×「祖母は医師の娘として生まれ」
○「祖母は学者の娘として生まれ」
“the daughter of a doctor” を単純に「医師の娘」と訳してしまいましたが、前の方に物理学者だと書かれていました。多分「博士」の意味の “doctor” だと思います。
P59上段 最後の行
×「釘が回転したり無くなったりするので合わせにくい。」
○「釘が回転したり裏側に隠れたりするので位置を読み取りにくい。」
オドネル計算機のように出入歯車を利用した機械式計算機では、クランクを回転させると置数用の釘もつられて回ってしまうようです。回転の途中では、当然裏側に隠れてしまいます。そもそも元の位置からずれてしまうので、クランクを動かしている間は釘がどの数字を指しているかを読めないことになります。この辺りの事情を知らずに、曖昧に意訳していました。

クルタ本完売しました。

 コミックマーケットで販売した「最後の歯車式計算機 クルト・ヘルツシュタルク氏インタビュー」ですが、無事完売となりました。正午には売り切れてしまい、正直ここまで人気が出るとは思いませんでした。私としては思い切った部数を刷ったつもりでしたが、これほど早くなくなるのは予想外で、わざわざお越しいただいたのに手に入れられなかった方々には、申し訳ない限りです。
 少部数は知人等への配布のためにリザーブしていまして、それが余ったら希望される方には何らかの方法でお届けできるかもしれませんし、来年の夏か冬には増刷するかもしれませんが、現時点ではどうなるか、全く不明です。何かが決まりましたらこのブログで告知いたします。
 ともかく、お買い上げいただいた方、ありがとうございます。拙い翻訳ですが、話のおもしろさに関しては保証いたしますので、読んでいただければ幸いです。